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2008年8月22日 (金)

実践的な考え方~物上げのために~

 売却相談における価格査定は、不動産仲介業者にとっては、「少しでも安い価格で、売却依頼(それも専任で)を受ける為の商談行為」です。間違っても不動産鑑定の先生になってはいけません。

 話は少しそれますけど、不動産仲介業の営業の最大の面白さは、不動産を売り人に対する営業と、買う人に対する営業があるということです。世間一般の営業、また世間一般の人の不動産屋の営業に対するイメージは買う人に対する営業がほとんどだと思います。しかし、不動産仲介業では売る人に対する営業が強い人の方が有利です。

 なぜかというと、値ごろ感のある物件を専任媒介で売却依頼を受けていると、たとえ自分でその物件に買い手を見つけることができなくても、どこかしらの不動産業者が買い手を見つけてきてくれるからです。もちろん、その場合は、自分は売主からのみ仲介手数料を得て、買い手を見つけてきた業者は買い手から手数料を得る、いわゆる「片手」の取引にはなりますけれど。

 例えば、8月は未だ1週間残っていますが、今月私は売買仲介7件、手数料金額にして420万円売り上げていますが、そのうち、5件、240万円は専任で売却依頼を受けていた物件で稼いだ収入です。しかも、あまり自慢になりませんが、その5件のうち2件は他の不動産業者が購入者を見つけてきた片手の取引です。今回は片手の金額は少ないのですが、5件の取引のいずれも専任で依頼を受けていたからこその数字です。また、この240万円のうち、170万円分は7月の段階からある程度読めていました。慣れてくると、インターネット広告のアクセス数その他から物件の成約を先読みすることができます。これは経営を安定させる上でとてもメリットのあることです。

 さて、話を元に戻しますと、そういう売主に対する営業と言うのは、買い手に物を売る営業と少し性質が異なりますから、多少考え方を変える必要があると思います。また、この業界特有の営業ですので、ノウハウ本など皆無ではないでしょうか。

 先日のブログでほんの触りくらいしか物上げのノウハウについて記述することができなかったので、今日もいくつかご紹介したいのですが、奇麗にまとめようとすると逆に判りにくくなりそうです。したがって、私が過去に先輩にご指導いただいたときの言葉や、自分の経験による思いをなるべく簡潔に(言葉はそのままのセンテンスで)ご紹介したいと思います。

☆(査定に行った先で過去の成約価格の一覧表を出そうとした私に対して、後で先輩に言われた言葉)「君はなんであそこでそんな資料を出そうとしたの?売主が3000万円で売り出しても良いというのだからそれで良いじゃないか。君が持っている成約事例で言えば売主の物件は3500万円にはなるよ。折角本人が3000万円で売り出してよいといっているのを3500万円にしたくなるような資料を持ち出してどうするんだ!(怒)」

☆「絶対に自分からは査定金額を言わない。これを鉄則としている。もしこちらの査定金額よりも売主の方が低い金額を想定していたらぶち壊しになってしまう。反対にこちらの査定金額よりもずっと高い金額を期待していたのだとすれば、『この不動産屋には絶対に依頼しない』と怒らせてしまうかもしれない。だから、絶対に自分から査定金額は言わない。査定依頼者は『相場がわからないから査定を頼んだ』というかもしれないが、自分の資産の価値を全く知らないヤツが居るか?少なくとも大体はこのくらい、あるいは少なくともこのくらいで売れたら良いな、という希望くらいはあるだろう。だからその希望を聞いてあげる。その希望の背景には何らかの事情(第三者からの情報、それ以下の価格で売れない理由etc)がある。その事情を理解した上で売り出しの価格を決めて、後は売りながら値下げ交渉をすれば良い。まず専任を獲得しないことには始まらないんだ」

☆「どんなボロ物件でも、安ければ売れる。どんな豪邸でも高ければ売れない。不動産屋にとってボロ物件とは相場以上の物件」

☆「中古住宅の場合、売主が土地にプライドを持っているのか、家にプライドを持っているのか見極めろ。家にプライドを持っている売主に建物部分にケチをつけて値下げさせようとしたら媒介契約を切られるぞ」

☆「相場より高めの金額でもとりあえず売却依頼を取れるなら取ってしまうほうが良い。しかし、それは将来値下げに応じさせたり、相場の上昇によって売れる価格になるヴィジョンが画ける場合で無いと、全く無駄な仕事になってしまうから注意をしよう。例えば、相場が3000万円なのに、3500万円の住宅ローンが残っていて、なおかつ預貯金等で売却金額との差額分を埋め合わせる資力が無い人から売却依頼を受けてもほとんどの場合無駄。」

☆「値下げに応じない売主の代表格が収益物件の売主。売れなくてもとりあえず収入が入ってくるので余程資金繰りに困っているなどの事情が無い限り、値下げしないことが多い」

かなりあからさまに書きましたが、いかがでしょうか?

 実は、私も、売却依頼を受けることの多い不動産屋としていつも葛藤があります。売主さんが知らずに相場よりも安い金額を相場だと誤認している場合どうするか?ということです。上記の☆で紹介している言葉によれば、「そのまま引き受ける」ということになるのですが、私の場合はそうしていません。私の場合、査定金額を自分から言わないことが良いのを知っていながら、今では自分から言うようにしています。その結果、相手方も相場より大幅に安く売り出すということがありません。

なぜそうしているかというと、地域密着の中小業者として長くやってゆく為にはそのほうが良いと判断しているからです。

最後に少し混乱させるようなことを言ってしまい申し訳ないのですが、☆印でご紹介した考え方は安く売却依頼を受ける為には良い考え方ですが、そればかりでやってゆくと、短期的には稼ぐことができても、長期的に稼ぎ続けることは難しいかもしれません。やはり、世間一般の倫理に反するようなやり方ではどこかで躓くような気がします。

しかし、相場より高い物件ばかりでは、業績があがらないし、結局売れなければ売主さんに貢献することができません。また、金は人から平常心を失わせる物ですから、不動産の売買になると売る人も買う人も一瞬金の亡者になってしまうことが少なくありません。そういう一瞬金の亡者になってしまった人を傷つけずに妥当なところで落ち着かせるにはどうしたら良いのか?そんなことができるのか??

 次回は、今でもいつも苦労している、そんな妥当なところに落ち着かせるプロセスについてご紹介してまいります。

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